この方法をさらに細かく見ていくと、ボトムアップモデルでは、営業指標とGHG排出係数を掛け合わせます。最も望ましい営業指標は、当該年度に販売された製品の量を製造単位で表したものです。当該企業がこの情報を公表していない場合、ブルームバーグでは代理指標として生産量のデータを用います。この営業指標ないし生産指標は、炭化水素や金属の生産量、抽出量、販売量を表すものとなります。炭素排出係数は、こうした材料の使用または加工から生じる単位当たり排出量を示した政府公認の表から入手します。
例えば、ある企業が石炭を1万単位生産し、石炭1単位当たりの変換係数がCO2換算1000万トンだったとすると、計算上の排出量は同1000億トンとなります。この計算結果を利用して、当該セクターのトップダウン型機械学習モデルに学習させます。このモデルはボトムアップモデルを補完するもので、計算上のスコープ3排出量、業種ごとの売上高、その他の主要な営業係数との関係を学習することでスコープ3排出量を推定します。
先の例に戻ると、X社が報告したスコープ3排出量は、2018年がCO2換算で1100万トン、2019年が15万2000トンでした。それに対し、ブルームバーグのスコープ3モデルによる推定では、2018年が2080万トン、2019年が1960万トンでした。
スコープ3排出量の算定は企業にとって極めて困難であるため、報告上のデータに必ずしも一貫性があるとは言えません。企業はスコープ3排出量の報告の標準化に努めていますが、排出量の推定値は、より一貫性の高い基準として毎年使うことができます。この例では、X社が報告をやめた「販売した製品の使用」のカテゴリーによる排出量を毎年勘案しています。