課題
アルミニウムやニッケルなど、その他の非鉄金属も、バッテリーに使われるため需要が拡大しています。例えば、バッテリーに一般的に使われるNMC622正極材は、ニッケルを60%、マンガンを20%、コバルトを20%含有しています。そのため、予想される金属不足によりEV、風力タービン、太陽光パネルの普及が抑制される可能性があると警告する専門家が増えています。
エネルギー移行がもたらす商業的な影響は、市場の専門家が従来、調査対象としてきた非鉄金属の枠にとどまりません。例えば、主要な商品取引所はリチウムやコバルトの先物取引を扱い始めているか、その準備を進めています。サプライチェーンそのものも変化しつつあります。オハイオ州を拠点とするスタートアップ企業のエヌス・サイクルは、供給不足に対応するため、使用済みバッテリーからニッケルやコバルトなどの金属の回収を始めました。金属の商業利用者は、生産に必要な材料の供給を確保しつつ、金属の調達先の特定を求める政府の命令にも従おうとしています。
この傾向は、企業の合併・買収(M&A)にも表れています。年初から7月14日までのM&A全体の件数は前年同期比で33%減少していますが、金属・鉱業のM&Aは274%増加し、リチウムなどの各種鉱物では690%増となっています。
米ゼネラル・モーターズ(GM)は今年2月、EV用バッテリーに使用されるリチウムの国内供給体制構築を視野に入れ、リチウム・アメリカズへの3億2000万ドル(約480億円)の出資を完了しました。脱炭素を目的とした法律が制定されていることから(例えば、カリフォルニア州は35年からエンジン車の販売を禁止する計画)、鉱業セクターのM&Aのトレンドは続く可能性が高いでしょう。