本稿は、Natasha Whiteが執筆しました。
気候危機に関心を示す人々にとって「トランジションファイナンス」は、2024年の最も重要なテーマの一つになりそうだ。
昨年12月にドバイで開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)のパネルディスカッションで、国連の気候変動対策・ファイナンス特使を務めるマーク・カーニー氏は、「今こうしている間にも、トランジションファイナンスの世界がつくられている」と述べた。
南アフリカ共和国の運用会社ナインティワンのサステナビリティースペシャリスト、アニカ・ブラウワー氏は、「気候への投資からトランジション(移行)への投資へと、議論が成熟してきている」と言及。同社によるドバイでのエンゲージメントの少なくとも半分は、新興国市場向けのトランジションファイナンスに焦点を当てたものだったという。
こうした言葉は、約200の国・地域が化石燃料からの脱却に合意したCOP28の最終合意に盛り込まれた。ただ、これは拘束力のない合意で、各国は世界的な移行に寄与することのみを求められている。言い換えれば、どのように、いつ取り組むかを決める上で、化石燃料会社にほとんど制約はないと、MUFGバンクの欧州・中東・アフリカ(EMEA)コモディティー・ESG(環境・社会・企業統治)・新興国市場調査責任者のイーサン・コーマン氏(ドバイ在勤)は言う。
これは、サステナブル関連のマンデートを持つ投資家などにも裁量を与える。「トランジションファイナンス」の定義は緩く、ネットゼロ経済達成への取り組みを後押しする産業やインフラ向けを中心とした投資とされている。風力発電所やバッテリー工場など、いわゆる気候ソリューションを一般的に対象とする「グリーンファイナンス」とは区別されている。