ESGデータでアクティブとパッシブ戦略間の差別化要因を探る
ブルームバーグ サステナブルインデックスヘッド Chris Hackel との Q&A
サステナブル投資の環境は急速に変化しています。ESG統合から生物多様性まで、まだ多くの課題が残っています。しかし、これらの課題とともに、多くの機会が存在することも確かです。
ブルームバーグが最近トロントで開催したサステナブルファイナンス・フォーラムの中で、ブルームバーグのサステナブル・インデックス部門統括Chris Hackelは、サステナブルファイナンス・イニシアチブのデータを企業がどのように活用し、金融分野における戦略的価値を高めることができるのかについての見解を示しています。
投資家がリスク管理を行う一方で、サステナブルな投資機会を収益化するためには、どのようにデータを活用したらよいのでしょうか?
気候関連要素や生物多様性などを含む新たなデータセットが急増しているという現状も認識する必要があります。ブルームバーグは、そのようなデータを有効活用し、不適格な銘柄を排除するネガティブスクリーニングから、適格銘柄を洗い出すポジティブスクリーニングへとアプローチの転換を目指す投資家のため、より多くのオプションを提供する必要性を強く認識しています。
そのような目的で活用されるベンチマーク・インデックス群は、これらのデータセットが内包するリスクと機会を的確に捉え、脱炭素への移行、気候変動、生物多様性など特定のテーマや特性に基づいて積極的な銘柄選別を行うための明確かつ透明性の高い、標準化されたアプローチを提供しています。
一方、気候関連要因をサステナブル投資に組み込むことに関しては、信頼性の高いベンチマークや、有効かつ比較可能な気候関連データの希少性が、大きな課題となっています。現状はどうなっているのでしょう。
投資家には、財務面と影響度の双方の観点から、ポートフォリオやベンチマークにサステナブル要因を取り入れることの潜在的価値をより深く理解したいというニーズがあります。市場では多様なデータが溢(あふ)れ、ベンチマークやポートフォリオが内包するまざまなサステナブルアプローチを採用することが可能となっています。
しかし、インデックス群で活用されるデータには、高いクオリティーへの信頼性が要求されます。ブルームバーグが開発したデータはインデックス内で有効活用が一段と進み、高い透明性と明確性を誇っています。データをさらに掘り下げ、数値の根拠を理解したい場合は、その数値の出所を正確に突き止めることが可能です。この点は特に重要だと思います。
ベンチマーク・インデックスのプロバイダーとしてブルームバーグが目指すのは、市場向けに開発されているこれらさまざまなデータセットを統合し、明確なルールに基づいた標準プロセスを作成して、投資家によるいわば「簡易テスト」を可能にすることです。そこで「これが運用実績にどう影響するのか」、「これがリスク特性にどのように影響するのか」という疑問がでてくると思います。そのような疑問が、サステナブル投資アプローチを考えるスタート地点となるでしょう。これまでの推移を見ると、債券はサステナブル投資の面で後れを取っています。テーマ投資は株式サイドでまず広がりを見せた後に、債券市場でも注目されるというのが常です。その大きな理由は、債券インデックス自体が非常に複雑だということです。発行体も多種多様で、満期も異なり、さまざまな要因が絡んでくるためです。しかし、特にアセットオーナーを中心に、クライアントが現在、最も関心を示しているのが債券市場です。株式サイドではすでにサステナブル投資が多く組み入れられており、投資家もマルチアセットの観点からポートフォリオの多角化を図りたいと考えています。従って、債券市場はサステナブル投資にとって大きな成長分野といえます。
債券における足元でのニーズはどのようなものでしょうか。
生物多様性、ESGスコア、気候変動を意思決定に取り入れようとする人々に対して、どのようなアドバイスをしたらよいのでしょうか。
気候変動、エネルギー移行、その他の要因が、投資家に新たな機会とリスクを生み出しています。例えば、化石燃料から再生可能なクリーン・エネルギー源への世界的なシフトによって、低炭素経済のためのソリューションを提供したり、高排出量の製品やサービスからの移行を効果的に管理したりする企業への投資機会が生まれています。
しかし最終的には、サステナブル投資は新たなデータと新たな情報をどう取り入れるかということに尽きます。
これらのテーマを取り入れることで生じるリスクと運用実績の関係性をより深く理解したい場合、まずインデックスを活用することが合理的な出発点となるでしょう。もし新たな潜在的な材料への知識に触れ、それがパフォーマンスや株式、債券などにどのような影響を及ぼすかを知りたい場合に、インデックスを見ることは非常に有効な手段となります。
カナダは現在、気候移行ベンチマークにおいてどのような位置付けとなっていて、それがサステナブル投資にどう影響しているのでしょうか。
サステナブル投資に関しては欧州諸国が先行しており、世界各国の大半は依然として初期の段階にあるのが現状です。欧州諸国は団結して、「長期的に経済の復元力と再生可能度合いを高め、金融セクターを通じて気候変動などの問題に対処することを望んでおり、それを推進するための法制化に取り組んでいく」と発信しています。
最近では世界的に、サステナブルファンドとインデックスの目標に対する透明性の強化に向けた規制イニシアチブが増えています。透明性の確保は、投資家が自らの財務目標と、場合によっては財務以外の目標に対するアプローチをより適切に評価するのに有効な手段です。それが、カナダのみならず、他国においてもサステナブル投資を推進する際の起爆剤となるのです。