気候変動の緩和と適応による投資機会の創出
低炭素で気候変動の影響からの回復力が高い経済へ移行することは、企業の事業戦略において考慮すべき重要な要素だという認識が高まっていますが、国際連合(UN)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などの主要機関は、世界が2050年までにネットゼロに到達する見通しが立っていないと懸念を示しています。
現在、この分野で金融セクターが勢いを増しています。開示や規制を取り巻く状況の進化と厳格化により需要が後押しされる中、気候変動の緩和と適応は投資のメガトレンドとして台頭しつつあります。
ブルームバーグの気候変動リスクソリューションは、現在と将来の物理的リスク、移行リスク、さらにはこれらリスクの相互作用を用いて構築した高度なモデルに基づいており、企業や投資家の皆さまなどに機会を提供します。
気候変動リスクとは、そしてその重要性とは
専門家の間では、気候リスクは主に以下の二つに区分して分析されています。一つ目は物理的リスクです。気温の上昇が企業経営に及ぼす急性的および慢性的な影響のことです。二つ目は移行リスクです。経済の脱炭素化に対する取り組みに関連するリスクのことです。
この分類方法は、気候変動から生じるリスクと機会の洗い出しを試みる規制当局や基準策定機関に広く採用されています。
「物理的リスクを用いて、さまざまな気温上昇のシナリオで企業経営に与える影響を把握しようとしています。例えば、企業の市場、顧客、収益、サプライチェーンにどのような影響があるのか。これには、洪水や山火事などの異常気象や、人口や生産性への影響も含まれます」と、ブルームバーグの気候リスクプロダクト部門グローバル・ヘッド、Ben Carrは述べます。
移行リスクのモデル化と分析は、化石燃料から低炭素経済への移行による、さまざまなセクターや国、地域への影響を理解することにかかっています。
Carrは以下のように続けます。「政策、技術、社会経済的発展の違いによって移行がたどる道筋は数多く考えられます。そういった多くのパターンを私たちは特定し、リスクモデルで検証しています。各国がさまざまなスピードで移行し、それぞれ異なる政策を採用する中で、同じセクターに属する企業であっても受ける影響は異なります。最も顕著な炭素集約型セクターはエネルギーと公益事業ですが、運輸や建築のような他のエネルギー多消費セクターもまた、大きな移行課題に直面しています」
勢いを増すネットゼロ移行
企業や個人の資産に関して、移行と物理的リスクの分析への関心が高まっています。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(ブルームバーグNEF)のデータによると、低炭素移行技術の開発への投資は、2022年に初めて1兆ドルを突破しました。
このような需要の背景には、自主的な開示要件から義務的な開示要件へという全体的なシフト、規制当局によるストレステストの重視、業界主導のネットゼロ・アライアンス、移行戦略や計画の策定と公表への注力など、さまざまな懸念が交錯しています。
Carrは次のようにも述べます。「将来を見据えた企業は、専門的なリソースを備え、質の高いデータと分析に裏付けられた強固な移行計画の策定を支援できる能力を築き上げつつあります。信頼性の高い気候移行計画とは、企業がさらされている気候変動リスクと機会を考慮に入れながら、どのように事業を積極的に移行していくのか、そのために必要な具体的行動を綿密に策定したものといえます。要するに、バリューチェーン全体にわたってどのように事業を脱炭素化していくかを検討している計画なのです」
ブルームバーグが支援する気候変動リスク分析
気候リスクの枠組みは、転換点のような重要な「既知の未知数」も考慮する必要があります。物理的転換点になり得るものの例として、グリーンランドや西南極の大きな氷床の崩壊や、永久凍土の広範な融解、さらには北大西洋の海流の崩壊が挙げられます。逆に、再生可能エネルギー価格の急速な低下や、電気自動車の販売台数の大幅な伸びなど、社会的にポジティブな転換点が訪れる可能性もあります。
ブルームバーグは、気候変動リスクのモデル化にさまざまなデータを利用する能力を備えています。例えば、米航空宇宙局(NASA)や米海洋大気庁(NOAA)のデータや評価を活用できます。また、ブルームバーグのモデル化では、ブルームバーグNEFが生成した、移行に関する調査・分析に基づく独自のデータを使用しています。
「現在、当社は企業の財務、金融市場、現物資産データ、サプライチェーンに関する従来のデータとこれらブルームバーグNEFのデータをすべて一元化しています。これは、投資家の皆さまがネットゼロ戦略を追求や実施する上で気候変動がポートフォリオに与える影響を評価できるようにするためです」とCarrは述べます。
「このような事への関心が高い企業は、意思決定プロセスや事業運営のあらゆる部分で、質の高い気候変動リスク分析を中核に組み込む必要があります」
移行リスクに関連する投資機会
移行リスクのモデル化は、セクターごとの分析に役立ちます。セクターごとにアプローチすることで、経済の脱炭素化によって最も影響を受ける特定のセクターについて深く分析できます。
「移行を支援するためにはどのような技術を開発する必要があるのか、また、ある企業は新技術に対してこれまでにどの程度投資しているのか。その企業は新旧の市場にどのようにアクセスし関与しているのか、さらに移行計画の内容と費用などを検討します。これにより、その企業の収益の過去や未来の推移について洞察を得られます」とCarrは言います。
「企業は気候適応への投資によって、回復力を構築し気候変動に備えることができます」
また、各セクターをまたがる、現在と将来の移行ペース、そして目標達成に必要な移行ペースのモデル化もあります。さまざまな排出削減の道筋と、その道筋における技術、インフラ、エネルギーシステムの変化を深く理解することで、何がどこで起こるのか、そして誰が変化を推進するのかについて、より詳しく把握できます。
Carrが率いるチームでは、ブルームバーグNEFによるデータ主導の洞察をエネルギー移行と金融に活用することで、ブルームバーグの移行リスク分析サービスにおいて、移行がさまざまな企業にどのような影響を及ぼすのかについて、わずかな差異も考慮した精密な分析を構築しています。
太陽光や風力などの再生可能エネルギーによるエネルギー安全保障はこの分野に不可欠で、特に太陽光発電は力強く成長しています。太陽光や風力をはじめとする再生可能エネルギーへの投資を3倍に増やすことは、COP28の主要勧告のひとつとされています。
自主的な炭素市場と炭素回収・利用・貯蔵・除去(CCUSR)技術も、関心を集めつつあります。
物理的リスクに関連する投資機会
一方で、洪水防御、農作物の回復力、食糧安全保障を向上させるための投資など、気候適応を積極的に支援するという投資機会もあります。
このような機会は現在、多くの場合は発展途上国でブレンドファイナンスを通じて実現しています。つまり、民間投資家の皆さまは公的資金を活用して投資を拡大できるのです。
Carrはこう指摘します。「パリ協定の目標である気温上昇2度未満を達成したとしても、異常気象の深刻さと頻度が増すことに変わりはありません。企業は気候適応への投資によって、回復力を構築し気候変動に備えることができます。リスク、企業への影響、そしてその永続的な影響を理解すれば、気候適応への投資には、金融サービスが適応とビジネスの成長を支援するという大きなチャンスがあります」
ブルームバーグは、移行への準備態勢にある世界の投資家、企業、金融機関の皆さまを対象にしたデータ主導型気候変動リスク軽減ソリューションにおいて、早くから革新的に取り組んでまいりました。現在と将来の物理的リスク、移行リスク、さらにはこれらリスクの相互作用を用いて構築した高度なモデルに基づいたブルームバーグの気候変動リスク・ソリューションでは、将来を見据えたビジネスの成長と回復力を支援する大きな機会を提供します。
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